【水中考古学へのいざない(8)】エベレスト登山より危険! 命懸け「タイタニック」探索ツアーで恩師が見た生々しい遺物(3/3ページ) - 産経ニュース

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水中考古学へのいざない(8)

エベレスト登山より危険! 命懸け「タイタニック」探索ツアーで恩師が見た生々しい遺物

 96年には、船体の一部が海底から引き揚げられた。4個の巨大な浮き袋を使い水面上に回収されたのは、重さ20トンの船体外側の鉄板部分だった。

 †犠牲者の魂静かに…

 これまでに数千点の遺品が引き揚げられたが、まだ数え切れないほどの品々が海底に残されている。

 タイタニック就航100年の2012年、ウィリアム・マードック一等航海士の遺品(パイプ、イニシャル入り洗面道具入れ、航海士用ボタンなど)が沈没現場から発見された。遺品は同年、アトランタで公開されている。

 13年には、沈没間際まで船上演奏に使われていたバイオリンが見つかった。楽団長のウォレス・ハートリーさんが婚約者のマリアさんから贈られたもので「婚約記念に」と刻まれた銀のプレート入り。マリアさんは生涯独身を貫き、1939年に死去。タイタニック号沈没にまつわる悲恋の物語である。さらに近年、豪州の富豪が「タイタニックII号」の建造を発表。新たな関心をよんでいる。

 水中文化遺産保護条約の発効(2009年)もあり、タイタニックが引き揚げられることは永遠にないだろう。タイタニックとともに沈んだすべての人たちにとって、静かで深い海底こそが、安息の場所なのかもしれない。(水中考古学者 井上たかひこ)