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ロシアのプーチン大統領は柔道を通して、規律と礼節を重んじる日本の作法を学び、自ら先頭に立って「柔の道」をロシアに広めてきた。13歳で柔道を始めてから半世紀。大統領になってからも畳の上で稽古に励む。少年時代、「問題児だった」と振り返るプーチン氏は柔道の師範にあい、心を入れ替えた。柔道がなければ「自分の人生がどうなっていたか想像もつかない」のだという。今、ロシアの小学生たちは大統領が作った教科書で柔道を学ぶ。黒帯の柔道家は「日本に感謝している」とさえ言った。(佐々木正明)
プーチン氏と柔道との絆を示すエピソードがある。
2000年7月、ロシア初代大統領、エリツィン氏から権力の座を引き継いだプーチン氏が九州・沖縄サミットのため来日した。プーチン氏は少年柔道大会の会場を視察。突然、スーツの上着を脱ぎ、ワイシャツ姿のまま中学生と乱取りに応じた。慣れた動きで相手を投げ飛ばし、相手の投げ技には受け身で応えた。様になっている姿に、会場から大きな喝采がわき上がった。
「講道館は第2の故郷」
その2カ月後、今度は首脳会談を行うため東京へやってきた。過密スケジュールの中、最終日に柔道の総本山である講道館を訪れた。プーチン氏たっての希望だった。ロシアから持参した柔道着に着替え、日本の選手たちの前であいさつに立ち、こう述べた。
「講道館に来ると、まるでわが家に帰ってきたような安らぎを覚えるのは、きっと私だけではないでだろう。世界中の柔道家にとって、講道館は第2の故郷だからだ」