国立劇場(東京都千代田区)開場50周年記念の「仮名手本(かなでほん)忠臣蔵」3カ月連続全段完全通し上演に10月から出演しています。光栄ですし、勉強になります。
10月は、初役で大星力弥(りきや)(史実では大石主税(ちから))という大役。女形の方も演じる役ですから、長身の僕はいかに体を殺し、若々しさを表現するか、澤村田之助のおじさまに教えていただき、勤めました。緊張の連続でしたが、お酒も断って身を清めて臨んだんです。
四段目、力弥は塩冶(えんや)判官(浅野内匠頭(たくみのかみ))に腹切り刀を運ぶ。力弥だけが判官と顔を合わせられた意味を考えると、本当につらく、自然と涙が出ました。忠臣蔵は楽屋のしきたりも多く、舞台裏から芝居を作る、それだけ大切な狂言だと実感しました。
11月は七段目(一力(いちりき)茶屋)の竹森喜多八役。放蕩三昧(ほうとうざんまい)の由良之助(大石内蔵助)に意見する塩冶浪士の一人です。(共演の)坂東亀三郎兄さん、亀寿(かめとし)兄さんからいいパスをいただき、そのラインを外すまいと、安定感に気をつけました。毎月、学ぶ点が違い、また、先輩方がいろいろと教えてくださるのが歌舞伎の良い文化です。