浪速風

「支援」で再発を防げるのか

昭和39年3月、ライシャワー駐日米大使が統合失調症の少年に刺され重傷を負う事件が起きた。精神障害者による犯罪への関心が高まり、精神衛生法改正のきっかけになったが、「保安処分」の議論は深まらなかった。「人権侵害」「権力が乱用する恐れ」などの反対論がわき起こったからだ。

▶相模原市の障害者施設での19人刺殺事件を受け、厚生労働省の有識者検討チームの最終報告書が公表された。再発防止策には「支援」という言葉が数多く出てくる。措置入院中から患者が孤立しないための「継続した支援」が必要で、都道府県知事や政令市長に退院後の「支援計画」作成を求めている。

▶具体的には、訪問相談や障害福祉サービスなどを挙げるが、どれほど実効性があるだろう。自治体や医療に責任を押しつけるだけではないか。欧米では刑事司法で犯罪予防的な「治療処分」が制度化され、専門病院もある。議論すらされずに、悲劇が繰り返されたらどうする。

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