ノルマンディー上陸作戦に参加したロバート・キャパのカメラを持つ手は震えていた。海岸のドイツ軍から砲弾、銃弾が雨のように降りそそぐ。「予期しない、新たな恐怖が頭のてっぺんから、足のつま先まで私をゆすぶって、顔がゆがんでゆくのが自分にも感じられた」(「ちょっとピンぼけ」から)
▶水の中を進む兵士がぶれた有名な写真はこうして撮影された。この1枚も「ちょっとピンぼけ」だが、それが現場の緊迫感を伝える。8月に和歌山市で起きた立てこもり事件で、拳銃を持った容疑者がカメラに照準を合わせた衝撃的な場面である。今年度の関西写真記者協会賞に選ばれた。
▶本紙の安元雄太記者が超望遠レンズで捉えた。安全のため100メートル以上離れていたが、「何が起こっても不思議じゃない、と体を伏せながら撮影を続けた」という。京都で始まった「報道展」は、神戸、大阪、広島と巡回する。一瞬を切り取る報道カメラマンの仕事に触れてほしい。