銀幕裏の声

落下傘・救命胴衣脱ぎ捨てて…護衛なき特攻、被弾した僚機の軍曹は手を振っていた 重爆特攻隊「菊水隊」の真実(下)

 「どうです。幼い頃から成績優秀、凄い経歴でしょう…」。その後、警視庁の警察官として32年間勤めあげた中村さんはこう語りながら愉快そうに笑った。

「決してへこたれない」“どんさん”の青春

 映画「進軍」を見て憧れた旅客機パイロットの道を断たれ、重爆パイロットとして特攻へ…。多くの同僚たちを失い、翻弄された青春を送った。しかし、中村さんは、そんな悲惨な過去の経験の辛さを微塵も表情に出さず、取材中終始、快活に明るく話し続けていた。

 捕虜収容所では本名を隠すために捕虜同士、互いにあだ名で呼び合っていたという。「仲良くなった零戦パイロットのあだ名は武蔵でしたね。私? どんさんですよ!」

 重爆「呑龍」から付けられたあだ名だ。戦場での壮絶な日々の記憶さえ、楽しかった青春の思い出の1ページのように冗談で笑い飛ばしながら語るどんさんの柔和な笑顔に、人間の生命の強さ、尊さを改めて教えられた気がした。

会員限定記事会員サービス詳細