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風邪かと思っていた体のだるさがなくならない。何をするのもおっくうで、食欲もない。そして、自宅近くの踏切で、吸い寄せられるように電車に身を投げ出そうとした。思いとどまったのは、一緒に仕事をした山谷親平さんの「自殺するのは愚か者の行為」という言葉が浮かんだからだ。
▶「小川宏ショー」が4451回でピリオドを打ってしばらくしての、65歳ごろである。投薬治療に加えて、「がんばって」と言わない家族の気遣いが支えになった。奥さんに遺書を渡そうとすると、笑いながら「これは印鑑がないので認められません」。体験記を発表したことで、鬱病に対する理解が進んだ。
▶ほぼ10年周期で鬱状態を繰り返した作家の五木寛之さんは、50歳では1日のうちで「うれしかった」こと、60歳で「悲しかった」こと、70歳は「ありがたい」と感じたことをノートに書いて、鬱から抜け出したという。享年90。小川宏さんは鬱病を克服して天寿を全うした。