正論

米国の「価値」の神話は崩れた 日本は価値の機軸を自問すべきだ 京都大学名誉教授・佐伯啓思

 したがって、トランプ氏が「アメリカ・ファースト」を唱えて、アメリカの世界への関与を制限し、国内回帰へと向かうのはわからなくはない。しかし、それで問題が解決するとは思えず、アメリカが再生するとも思えないのだ。

 トランプ氏は、大規模な公共投資や減税、金融市場の規制緩和などで経済を成長させる、というが、それはまったく未知数である。世界から撤退するかのようにいいながら、ISの殲滅(せんめつ)や軍事力の増強を主張し、強いアメリカの構築という。現状では、彼の信条がどこにあるのかは不明である。

 確かなことは、アメリカが掲げてきた諸価値の普遍性という神話は崩れ去ったということだ。ということは、日米の価値観の共有などというより前に、日本はまずは、自らの価値の基軸をどこに置くのか、それを改めて自問すべきなのではなかろうか。(京都大学名誉教授・佐伯啓思 さえきけいし)

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