正論

米国の「価値」の神話は崩れた 日本は価値の機軸を自問すべきだ 京都大学名誉教授・佐伯啓思

 アメリカを支えてきたものは、自由な資本主義と人権主義にもとづく民主主義であった。こうしたものをアメリカは普遍的価値とみなして、その世界化をはかってきた。これらの普遍的価値の世界化が同時にアメリカの国益だとされたのである。そして、しばしば、トランプ氏の登場は、このアメリカ的普遍主義に対して大きな打撃を与えかねないといわれる。

 しかしそうではなく、そもそもアメリカ的普遍主義がうまくいかないがゆえに、トランプ氏が登場したのである。自由な資本主義は、科学技術上のイノベーションと結合してグローバル資本主義を生み出した。人権主義や民主主義の普遍化は、アメリカの国益と結び付きつつ、中東への無謀な介入を生み出した。そして、前者は、中国の経済成長を助けはしたが、アメリカ国内の中間層の没落を招き、後者は、結果として「イスラム国」(IS)を生み出し、中東の混乱はいっこうに収まらない。

≪日本は基軸をどこに置くか≫

 これが現実なのである。自由な資本主義、科学技術の合理主義、人権主義と民主主義、そして、その普遍性というアメリカが高々と掲げた価値がどれもうまく機能しなくなっているのである。

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