「トランプ・ショック」から約1カ月がたった。いまだに米国内では反トランプ運動がみられるが、株式市場は予想外の高騰となり(投資家は彼の経済政策に期待する、いわば「隠れトランプ」だったということである)、しばらくは様子見といった状態である。
トランプ現象の解読や今後の展望は多数発表されているが、ここでは、この現象のもっとも根底にあるものを取り出してみたい。すなわち、アメリカがこの20~30年掲げてきた価値の欺瞞(ぎまん)があらわになったということである。
≪グローバリズムの問題が顕在化≫
まず、この現象のもっとも基底にあるものは、経済的なグローバリズムと民主的な国家体制の間の矛盾である。経済的グローバリズムは、過剰なまでに自由な資本移動や技術移転、利益をめぐる激しい競争によって、国家間においても、地域間においても、また、国内においても格差を生み出した。
成長にのれない不満層は、民主政治を通して政府に不満をぶつける。その結果、既存の政治は批判され、政治は不安定化する。
この場合、不満層の矛先はグローバル化を推進するエリート層や、仕事が競合する移民へと向けられる。そこでこの不満をすくい上げた政治家は大衆(不満層)の歓呼をもって迎えられるだろう。英国の欧州連合(EU)離脱でも同じ構図が見られ、フランスにおける近年の国民戦線とルペン氏への支持も同じ事情が背後にある。