■自然農法…やりたいことできる
地方の人口減少が進む一方、東京圏から県内に移住したいという現役世代のニーズも増えてきている。横浜市出身で、全国一周の旅をした後、平成25年に南牧村に出会い移住、自然農法で野菜やニワトリを育てる五十嵐さんに、現在の暮らしと移住への思いを聞いた。(久保まりな)
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--全国一周の旅を経て、移住先が南牧村になったのはなぜですか
「雑貨関係の会社員をしていた時、生産、販売、流通の流れを知り、第1次産業と田舎を見てみたいと思うようになった。農業を勉強しようと全国を旅歩いたが、条件に合う場所がなく4年で旅を終えた。その後、友人が群馬にいたので、県内の農村を見て回り、南牧村に来たら『ここだ』とピンときた」
--どの辺に良さを感じた
「村役場の人の雰囲気と、南牧の山間地の景色かな。田舎の自然を追求し、肥料や農薬などを与えない『自然農法』をやりたくて、家の裏にある畑の土を見ると、農業に役立つ有用菌類が層になっているのが分かった。ここならやりたいことができる、と。2週間で引っ越してきた」
--現在はどのようなことをやっているのですか
「村内の畑3カ所で、20種類以上の野菜を育て、県内や都内の青果店などに出荷。山間地で水はけの良い南牧村に合う野菜を作りたい。特にジャガイモはおすすめ。ニワトリも100羽飼っており、卵も生産している」
--自然農法のよいところは
「肥料などで短期に成長させた野菜は栄養過多で虫が寄ってきてしまうこともあり、虫除けのために農薬を使わないといけないこともある。自然農法では肥料や農薬を使わず野菜が傷みにくく、また、バランスの良い状態で育つ。味が違う」
--横浜から南牧。不安はなかったですか
「自分のやりたいことができる、とワクワクした。ただ、良い肥料や良い農薬を使ってナンボという部分が世の中にあり、自然農法を理解してもらうまでが大変だった。自分で印刷物作ってPRしたり、説明して回るなどし、徐々に理解してもらえるようになった」
--村の魅力は
「これまでの人たちが残した産物が景色となって表れているところ。地形に沿った家だったり、伝統的な祭りが残っていたり…」
--今後の目標を
「高齢化も進んでいるので、道の駅などに売られる南牧の特産物を途切れさせないため、自分もスピーディーに成長しつつ、生産者や加工する人を増やしていきたい。移住者も他にもおり、うまく生産から加工、流通の流れを定着させていきたい」
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【プロフィル】五十嵐亮
いがらし・りょう 昭和55年、横浜市青葉区生まれ。中3から4年間は宮城県で過ごす。高校中退後、土木の仕事などをし、横浜に戻る。雑貨関係の会社で働いた後、平成21年から農業を勉強する全国一周の旅に出る。25年に南牧村と出会い、移住。現在は自然農法で野菜を育てている。