川村元気さん「四月になれば彼女は」 恋を忘れた男女、揺さぶる記憶

 結婚を控えた藤代と弥生にも、すでに交際を始めたころの熱はない。家では一緒に映画のDVDを見るけれど、寝室は別で2年間セックスはない。別れは突然来るし、愛もいつしか情に変わる-。たとえそうであっても相手を強く思おうとした過去の恋愛の回想が、現在を生きるどこか冷めた藤代たちの心を揺さぶっていく様子が印象深い。

 「現代社会では男女とも自立して生きることを求められていて、誰かと一緒にいる意味が薄らいでいる気がする。でも恋愛しているときって不器用で不格好だけれど、はっきりとした輪郭をもって生きている感じがしますよね。生きることがちっぽけな生にしがみつくことでしかないのなら、『うまく整えよう』としないで、あがいた方がいい、とも思うんです」

 初の小説『世界から猫が消えたなら』では「死」を扱った。2作目『億男』のテーマは「お金」で、3作目の今回は「恋愛」。「どう向き合えばいいのか-永遠に解決しない問題だからこそ現在が見える」と普遍的な題材に挑み続ける

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