一方、ハリウッド作品の比率は全公開作の約10%に過ぎないものの、大抵、興行収入ランキングのトップに君臨。過去6年間の興行収入ベスト25にランクインした作品をみても、8本~10本はハリウッドを中心とした海外作品でした。
タウソン教授は記事で、こうした現状は過去に中国の他の産業が経験したことと同じだと指摘します。
海外の企業は優れた品質や技術、ブランド力を持っており、中国では市場のトップに君臨。そのため現地企業はコスト面でも品質面でも太刀打ちできず、市場の中位~下位に甘んじることになります。
ところが中国の企業は時間をかけて成長し、自社製品の品質を向上。再投資や企業買収などに踏み切り、市場のトップに君臨する外国企業に攻撃を始めるのです。
実際、この戦略によって、中国市場でトップに君臨していたスマートフォン(高機能携帯電話)やネット企業、不動産、再生可能エネルギー、医療機器、投資銀行業務などの企業が致命的な打撃を受けたといい、今後、中国の映画産業がハリウッドに対して同じことを行うというわけです。
それだけではありません。タウソン教授は記事で、中国で映画やテレビ番組の製作といったクリエーティブな仕事をめざす学生が急増している実態にも触れます。実際、2009年には中国の大学生1900万人のうち、5%は芸術やデザインを学んでいたといいます。この数字、法律や経済学、数学、化学を学ぶ学生より多いというのです。
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こうした状況に加えて、中国の大手ネット企業である百度(バイドゥ)やアリババ、テンセントが映画やテレビ番組の製作事業に参入している事実にも言及します。
テンセントは映画製作会社「ペンギン・ピクチャーズ」を立ち上げたほか、2015年に中国で興行収入1位の大ヒットを記録した3Dアニメ映画(中国・香港合作)「モンスター・ハント」に出資。
アリババはグルーブ企業の映画製作会社「アリババ・ピクチャーズ」が2015年公開の「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」に出資したほか、日本でもおなじみの米動画配信大手のネットフリックスのような有料動画配信サービスをスタート。映画チケットのネット販売システムにも多額の投資を実施しました。