【ワシントン=青木伸行】トランプ次期米政権の安全保障分野に関する布陣は、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍司令官、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にマイケル・フリン元国防情報局長と、軍事経験が豊富な元将官を起用されたことで、タカ派色が色濃く表れた形だ。オバマ政権から次期政権に持ち越されるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の掃討を強化する明確な意思の反映だとみられている。
マティス氏は海兵隊大将、フリン氏は陸軍中将だった。両氏に共通するのは対テロ戦における豊富な実戦経験と深い知見だ。
マティス氏は1991年の湾岸戦争に従軍。米中枢同時テロ(2001年)後のアフガニスタンでの対テロ戦には、第1海兵遠征旅団の指揮官として参加し、04年のイラク中部ファルージャ制圧作戦では中心的な役割を果たしている。
一方、フリン氏はイラクやアフガンで情報将校として5年近く作戦に従事。アフガンで特殊作戦を情報面で支援した経験から、軍や警察、情報機関、民間の情報を融合した作戦の遂行を提唱してきた。
フリン氏は対テロ戦でロシアとの協力を主張し、トランプ次期大統領がロシアのプーチン大統領に好意的なのは、フリン氏の影響だとの見方さえある。マティス、フリン両氏はまた、オバマ大統領や政権幹部との確執などから、退任を余儀なくされた点も共通している。両氏のアジアでの経験は少ないとみられ、アジア政策は未知数だ。