JAみなみ信州(飯田市)とJA上伊那(伊那市)は30日、伊那谷特産の干し柿「市田柿」の販売額を現在の2倍に押し上げ、100億円規模の地域産業に育てる計画を打ち出した。市田柿は今年7月に国が地域の特産品をブランドとして保護する「地理的表示保護制度(GI)」に登録された後、11月26日に初出荷され、市場に参戦した。農協改革に迫られるなか、GIを武器に海外にも販路を広げて大幅な生産拡大と農家所得の向上を図り、強力な地域ブランドとして確立していく考えだ。
市田柿は年間1200〜1400トン程度が全国に出荷され、信州の味覚の代表の一つとして知られる。あめ色の果肉は、もっちりした食感と上品な甘さが特徴で、高級贈答品としても人気が高い。中国産などの模倣品が出回ったこともあり、JAみなみ信州などが平成18年に地域団体商標登録を行い、ブランドの保全に努めてきた。
今後はGIにより国際的に保護されたことに加え、国が厳格な登録基準をもとに内外に高品質のお墨付きを与えた効果もあり、市場での評価も格段に上がることが期待されている。
地域経済を担う大きな星となった市田柿の売り出しをめぐってJAみなみ信州とJA上伊那は30日、飯田市内で販売事業連携の契約書に調印し、「100億円産業化」を目指す農業振興ビジョンを発表した。
その主な柱は、両JA管内で生産される市田柿を、知名度が高い「JAみなみ信州」ブランドで売り出しつつ、GIを活用した輸出や販売の強化を進め、冬季に限られていた販売期間の延長を図るという内容だ。生産意欲向上や栽培面積拡大などによる一次基盤固めにも力を注ぎ、販売額を倍増させる戦略を描く。
JAみなみ信州の田内市人組合長はこの日の記者会見で「市田柿は地域の宝であり、経済を伸ばす武器となる。国内では干し柿のトップ銘柄だが、世界に通用するドライフルーツにしたい」と意気込みを語った。
生産基盤の強化に向けては遊休農地の活用によって栽培面積を広げたり、専業的な農家を育成したりする構想も明らかにした。
市田柿の平成27年度の販売額は、集荷分でJAみなみ信州が29億4千万円、JA上伊那が4800万円を計上し、商社経由分なども含めて地域全体で約50億円に達した。輸出額は1億円程度だが、国内市場への供給に手一杯だったのが実情だ。両JAは、中国はじめ海外での潜在的な需要は現在の数倍あるとみている。