浪速風

探偵の「10%税」

ローレンス・ブロック作「八百万の死にざま」(ハヤカワ・ミステリ文庫)などに登場する探偵マット・スカダーは、依頼料の10分の1を教会の寄進箱に入れる。強盗に向けて発砲した銃弾がそれて通りかかった少女を死なせ、警官を辞めた。以来、「10%税」を自らに課し、ろうそくをともして祈る。

▶昨日朝刊の曽野綾子さんのコラム「透明な歳月の光」に、聖書のエピソードが載っていた。1人の寡婦が賽銭(さいせん)箱にレプトン銅貨を2枚入れた。最低の単位の貨幣だが、見ていたイエスが「だれよりもたくさん入れた」と言った。「乏しい中から持っている生活費を全部入れたからである」

▶曽野さんは「人を救うということは、自分が得てもいいものを、いくらかでも辛(つら)い思いをして他者に譲ることだ」と書く。歳末助け合い運動がスタートした。クリスマスソングが流れる街のボーナス商戦や忘年会のにぎわいから、取り残された人たちがいることを忘れてはなるまい。