梯久美子さん「狂うひと」 島尾ミホの評伝 「死の棘」をめぐる夫婦の壮絶な闘い(2/4ページ) - 産経ニュース

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梯久美子さん「狂うひと」 島尾ミホの評伝 「死の棘」をめぐる夫婦の壮絶な闘い

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 奄美・加計呂麻(かけろま)島の旧家で育ったミホは、第二次大戦末期に特攻隊長として島に赴任した敏雄と運命的な恋に落ちた。しかし、戦後の本土での結婚生活は現代の夫婦に通じる残酷さに満ちている。文学での成功を求め家庭を顧みない夫、性病の罹患(りかん)などつらい日々が続く。梯さんは敏雄の全集と日記、ミホのメモや草稿などに目を通し、親族や当時の文学仲間らに取材。著名な評論家らの言説により定着した「ヤマトから来た守り神」と「島の巫女(みこ)」による「理想的な夫婦関係」に異を唱える。

 「実際は『書く』『書かれる』をめぐり、壮絶な闘いを繰り広げた夫婦だった。島尾さんは書かずにはいられない人で、ミホさんは小説に『書かれること』で夫を支配した。『死の棘』も、ミホさんの目を気にしながら書かざるを得なかったはず」と梯さん。

 また、女癖が悪く小説のためには女性を利用することもいとわない敏雄、女学校時代を東京で過ごし探偵に夫の素行を調査させる世慣れたミホなど、2人の意外な一面が次々と明らかになり、ミステリーを読むようにページが進む。

 「島尾さんは、ミホさんの反応を見ようと日記をわざと見せたのかもしれない。愛人の女性に近づいたのも書く材料にするためだったという説がある。小説のために、そこまで冷酷になれる人だった」