書評

脚本家・小林竜雄が読む『最も危険なアメリカ映画』 町山智浩著 にじむトランプへの危機感

『最も危険なアメリカ映画』町山智浩著
『最も危険なアメリカ映画』町山智浩著

 次期アメリカ大統領に決まったトランプは白人の男至上主義者のようである。マイノリティーへの差別や女性へのセクハラ発言もそこからきている。この時代錯誤な男を今、最も必要な大統領としてアメリカ国民は選んだ。〈強い父〉トランプはクリントンという〈弱い母〉を蹴散らしたといえる。だが白人以外の人々は恐怖を覚えただろう。そこでこれからのトランプ政治で予想される危険な動きを考えるときに参考となる過去の映画群を紹介したのが映画評論家・町山智浩の手になる本書である。

 町山の強みはアメリカに在住しているので製作状況や地元の反響をビビッドに反映した批評ができるところだ。そこが配給会社の資料だけでお手軽に論じている人たちとは違う。20作を俎上(そじょう)に載せる。黒人差別では南北戦争後解放された黒人を白人が集団で襲うことを正当化した「國民の創生」(1915年)、スパイの暗躍では中ソのスパイである母親が帰還兵の息子を操って大統領候補の暗殺を命じる「影なき狙撃者」(62年)、ポピュリズムの問題では過激な言葉で政治家や富裕層への怒りをぶつけ人気者となり州知事になった弁護士が独裁に走っていく「オール・ザ・キングスメン」(49年)などがある。

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