正論

タイ国王の「友好の絆」忘れるな ジャーナリスト・井上和彦

 それから約10年を経た昭和30年、戦時中タイ駐屯軍司令官だった中村明人元中将がタイに招待され、国民から大きな歓迎を受けた。タイの人々が日本へ寄せていた思いの表れだった。

 昭和38年5月、プミポン国王が来日し、天皇陛下と会見した。プミポン国王は靖国神社参拝を希望したというが、日本の外務省が難色を示したため、代わって中村元中将が参拝した。社報『靖國』(38年7月号)に掲載された中村元中将の手記によれば、NHKホールで開かれた歓迎音楽会の休憩時間にプミポン国王が中村元中将を別席に招き、靖国神社と千鳥ケ淵墓苑に参拝してもらいたいとの意向を伝えたのだという。

 同年6月4日にはプミポン国王からの生花が神前に供えられ、鎮魂の誠がささげられた。この日のことは『靖國神社百年史』にも記されている。

 プミポン国王は日本との関係を重視し、戦没者に対しても敬意の念を忘れなかった。現代に生きる日本人は、プミポン国王が守り続けた両国友好の絆を維持していかなければならないだろう。(ジャーナリスト・井上和彦 いのうえ かずひこ)