正論

タイ国王の「友好の絆」忘れるな ジャーナリスト・井上和彦

 タイには『クーカム』というドラマがある。戦時下の日本海軍士官とタイ人女性の恋愛小説(邦題『メナムの残照』)をもとに1970年にテレビドラマ化されて以来何度もリメークされ、映画化されている。もし日本軍とタイの人々との関係が良好でなければ、このようなドラマが制作されることはなかっただろう。

 防衛面でも戦前からタイには日本から兵器供与が行われていた。タイの発注を受け、潜水艦4隻を含む多くの戦闘艦が日本で建造された。昭和12年に横須賀で建造されたメークロン号などはその後長くタイ海軍で使われ、いまも完全な姿で保存されている。また戦時中、一式戦闘機「隼」や九五式軽戦車なども供与されていた。

 だが昭和20年8月15日、日本は無条件降伏した。このときタイは速やかに日本との同盟を破棄し、締結した協定をすべて無効とする行動に出た。タイが王室と独立を保ち続けるためには苦渋の選択だったに違いない。

 ≪靖国神社に鎮魂の誠をささげた≫

 連合軍はタイに戦犯裁判の実施を通告した。タイは自国が独自に裁判を行うとして、ピブン元首相ら10人を逮捕・抑留した。しかし翌年3月、戦争犯罪人の処分に関する法律は無効であるとして全員を釈放している。(前掲書)