河崎真澄の視線

経済減速もなぜか活況 中国不動産バブルの不思議 

 まず「消費者の不動産神話」だ。中国人にとり個人マネーの運用は安全性や流動性より、リスクはあっても収益性をまず重んじる傾向が強い。資産をもつ個人のほとんどが、デコボコはあっても中長期的に右肩上がりが続くと信じる心理効果が不動産市況を支えている。

 将来の値上がりによる「含み益」を見越して、その分までを担保にした住宅ローンが流行する狂乱ぶりだ。2014年から15年半ばまでは、株価高騰で個人マネーが証券市場に流れて不動産市況は落ち込んだが、昨年の株価下落に伴ってマネーが住宅購入に再び戻ってきた。

 金融規制で個人資産の運用先が限られる中国では、株価下落局面では不動産が買われ、不動産の下落局面では株式が買われるという投資行動が一般的だ。

 次に「地方政府の懐事情」がある。全土に31ある省級の地方政府とその下の小さな市政府などは「土地譲渡収入」が実際、歳入の3分の1前後を占める。

 中国の土地はすべて国有という共産主義国家の原則を持ち出し、農地を強制収用に近い形で安く吸い上げ、内外の開発業者にマンションや商業施設を建設させて高値で売り抜ける。いわば錬金術のような手口で巨額の利益を得る。汚職の温床になりやすい上、需給バランスはどんどん崩れるが、歳入拡大のため不動産市況つり上げ策が最優先課題という。

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