鑑賞眼

国立劇場「仮名手本(かなでほん)忠臣蔵」(第2部) 吉右衛門の大星 所作万端に見どころ

 開場50周年を迎えている国立劇場。記念の歌舞伎公演は、10月から3カ月にわたる「仮名手本忠臣蔵」全11段の完全通し。今月は第2部。5、6、7段目。

 赤穂(あこう)浪士たちの意気地、関わる女性たちの悲嘆。全編に通底する男女の哀愁物語の中で、情味と華があふれる場面が並ぶ。幕開きに「道行旅路の花聟」が付く。早野勘平(中村錦之助)と腰元おかる(尾上(おのえ)菊之助)が手に手を取って落ち行く場。10月の第1部で「文使い」「裏門」が出たことで、主君仇討(あだう)ちに乗り遅れた2人のつらい心情と若さゆえに燃える恋心に沈殿してしまう諦観とが、清元のノドと糸に乗って蝶のように華やぐところだ。2人とも型通りの所作事も富士、桜、菜の花の背景美に負けている。菊之助に凛としたいつもの精彩がない。6段目「勘平腹切り」の肚(はら)も薄い(8日所見)。

 単独でよく上演される5、6段目。勘平は尾上菊五郎。「鉄砲渡し」で笠(かさ)をとってふっと現す顔の翳(かげ)り。美しく、愁いを塗った約束通りの歌舞伎の伝承美にゾクッとする。