英文学者の松浦嘉一は、ロンドン行きの汽車の車窓の光景をこう書く。「工場があちこちに見えてきて、労働者の住宅も現われてくる。二十坪もある矩形の裏庭が線路とすれすれにまで設けられ、髭(ひげ)を生やした男がくわえパイプで、花をいじっている姿がちらっと見える」(「英国を視る」から)
▶1930年代、ガーデニングが大衆化し、ブームになったころである。松浦はたくましい労働者と花いじりの対比に興味を持ったようだが、イギリス人にとって庭は居間と同じで、少々寒くても庭で客を迎える。10万株の花畑がライトアップされ、夜間開園が始まった「うめきたガーデン」に行ってみた。
▶まさに大阪の庭である。冬の街はきらびやかなイルミネーションで彩られるが、今年は花が加わった。昼とは装いを変え、高層ビルの夜景との競演が美しい。ちょっとお酒を飲んで、逸品縁日のグルメを楽しみ、長居をしてしまった。仕事帰りに、温かくしてお出かけを。