不思議なのは、相手はあくまでCG(コンピューターグラフィックス)で描かれた女の子なのに、「そこに確かにいる」と感じることだ。会話の選択肢はVR空間の中に浮かんでおり、視線を合わせて選び、ゲームを進める。玉置氏によると、開発段階で選択肢を一般的なゲームのように前面に配置したところ、リアリティーが一気に失われた。その反省で現在の形になったという。
存在を感じるのはやはり、視線が合うときだ。「いったん目が合うと無視できなくなる。人間扱いしないといけない、と思うようになる」(玉置氏)という狙いがある。
サマーレッスンの題名の通り、舞台は真夏。これは、動いたときの衣服の表現が厚着では複雑になり、難しいことが大きい。髪形はポニーテールだが、これも、表現のしやすさから決まったという。
PSVRでは、海底でサメに襲われたり、ゾンビに追いかけられたりするソフトも出ている。異彩を放つサマーレッスンだが、ここに「コミュニケーション」というVRの一つの方向性がありそうだ。このゲームでは、ひかりの問いかけに対して、プレーヤーは選択肢を選んで答える。しかし、人工知能(AI)がさらに発達すれば、利用者が実際にしゃべっても会話が成り立つようになる。さらに想像をめぐらすと、接客業などの仕事の訓練や、人と話すのが苦手な人がそれを克服するためにもVRを利用できそうだ。