環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認案が衆院を通過した。
その一方で、TPP離脱を唱えるトランプ氏が米大統領選に勝利し、発効は極めて難しくなったという現実がある。
TPPは米国が加わらなければ発効しない仕組みだ。それゆえ、日本が率先して審議する必要などない、という議論が野党などにある。だが、これには同意できない。むしろその逆ではないか。
トランプ氏に世界が抱く大きな懸念の一つは、保護主義の広がりである。自由貿易の推進で各国が結束を図り、そうした動きを阻むことが必要である。
参院審議を確実に進め、日本が批准を果たすことは、その意思を具体的な行動で示す意味がある。保護主義の流れを断つよう米国に求める前提にもなる。
安倍晋三首相は17日にニューヨークでトランプ氏と初めて会談することになった。日米同盟を維持、強化していくため、早期の顔合わせは重要である。
安全保障のみならず経済でも日米が協力し、同盟の実を上げていく大切さを訴えるべきだ。トランプ氏の真意をただし、孤立化を避けるよう促してもらいたい。
その後にあるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、TPP参加国を糾合し、任期中の議会承認に望みをつなぐオバマ大統領を後押しすることが肝要だ。安倍首相が指導力を発揮すべき場面である。
TPPに期待される本来の意義を思い起こしてほしい。