指定医制度の根幹を揺るがす前代未聞の事態が起きた。別の医師が書いた患者の症例リポートを写して自らの業績にしたなどとして、全国の精神保健医89人が資格取り消しになった。悪い学生のようにリポートをコピペするような倫理観のない医師が、なぜ生まれてしまったのか。こうした医師をのさばらせた厚生労働省の責任はないのか。医師の大量処分による患者や地域医療への影響も計り知れない。
「極めて遺憾」全国に蔓延
「精神科医療に対する国民の信頼を揺るがす極めて遺憾な事態と思っている。同時に、2度とこういった事案が起きないようにしなければならない。必要な診断や治療に従事した経験を確実に審査できる手法の導入など、再発防止をしっかりやっていく」
塩崎恭久厚労相は厳しい表情でこう語った。
厚労省は10月26日、不正を働いたとして「精神保健指定医」89人の資格を11月9日に取り消すことを決めた。一度にこれだけの人数の指定医が行政処分を受けるのは初めて。取り消し対象者がいた病院は、群馬から沖縄までの12都府県で、全国に不正が蔓延していたことが明らかになった。