野口裕之の軍事情勢

天皇陛下にまつわる不思議なお写真 国際慣行に沿った栄誉礼で、皇室と自衛隊を隔てる「壁」を除く時代が到来した

【野口裕之の軍事情勢】天皇陛下にまつわる不思議なお写真 国際慣行に沿った栄誉礼で、皇室と自衛隊を隔てる「壁」を除く時代が到来した
【野口裕之の軍事情勢】天皇陛下にまつわる不思議なお写真 国際慣行に沿った栄誉礼で、皇室と自衛隊を隔てる「壁」を除く時代が到来した
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 畏れ多きことながら、まことに「不思議なお写真」であった。

 「不思議なお写真」は天皇陛下が国賓をお迎えになるときや、国賓として行幸なさる際、必ず撮影される。10月に来日されたベルギー国王、王妃両陛下の歓迎行事も、残念ながら例外ではなかった。 

 皇居・宮殿東庭で行われた歓迎行事には、天皇、皇后両陛下や皇太子、皇太子妃両殿下のご臨席の下、安倍晋三首相ら三権の長や閣僚も陪席した。両国国歌の演奏に続き、国賓=フィリップ国王は天皇陛下の横をお一人だけで離れ、陸上自衛隊の儀仗隊による栄誉礼を受けて部隊を巡閲された。その間、天皇陛下は数歩儀仗隊の方向に歩み寄られ、フィリップ国王の巡閲を見つめておられた。先導したのは儀仗隊の指揮官で、国王陛下にはベルギー軍武官が従っていた。

 国王が、他国の国王を国賓として訪問する場合、国軍による栄誉礼が行われるが、訪れた国王は訪問先の国王と共に巡閲するのが国際慣行だ。故に、小欄にとり「不思議なお写真」という仕儀になる。

 小欄が「不思議」に気が付いたのは2009年7月。天皇、皇后両陛下を迎えるカナダ政府の公式行事が開かれたオタワのカナダ総督邸で撮られた一枚の写真が発端だった。

 もちろん、カナダ陸軍セレモニアル・ガード(儀仗隊)による天皇陛下への栄誉礼が行われた。写真(代表撮影)は翌日付産経新聞に掲載されたが、陛下に従う軍人が気になった。宮内庁に問い合わせると「総督府付武官」だった。カナダ軍人だったことには驚いた。元首級への栄誉礼では、後ろに元首側国軍武官が着くのが国際慣行だからだ。確かな理由がある。

 栄誉礼においては、儀仗兵が小銃を顔前で縦に構える《捧げ銃=ささげつつ》が、指揮官により命じられる。指揮官も儀礼刀を右下段に構える。銃は撃てない、儀礼刀は斬れない-と、外国賓客に証明する意味を持つ。儀仗兵が直立不動の姿勢で並ぶ中、指揮官は儀礼刀を、この時は右肩前に縦に構え、賓客を先導する。暴徒が乱入した際には、賓客を「守護し奉る」との、意志表明なのである。

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