本命のクリントン氏を相手にトランプ氏が番狂わせを演じている背景には、有権者の「怖いもの見たさ」の心情がある。口でいうほどクリントン氏の実力がないのは大統領夫人、上院議員、国務長官として実証済みで、それならば何が起こるかは分からないが未知数のトランプ氏に賭けてみよう-というわけだ。「モンスター」が大統領選に勝ち、ワシントンを席巻する可能性はある。
トランプ氏は一時、女性に対する下品な発言や「セクハラ疑惑」で崖っぷちに立たされた。女性器や性交渉を意味する俗語を使う場面が放映されたのだから、大統領になる資質を問われるのは当然だ。
ただ、暴言を繰り返してきただけに、下品な発言は有権者も織り込み済み。フロリダ州のある女性の支持者は「3人の男の子を育てたが、あの程度の話は日常茶飯事」と意に介さない。
同じ悪さをしでかしても、不良少年と優等生では後者の方が耳目を集めるものだ。連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題で捜査を再開したことで、「不正なヒラリー」のレッテルは受け入れられやすくなった。好感度の低い「2つの悪」(米メディア)から選ぶ今回の選挙は、「よりましだ」と思わせた側が有利だ。