鑑賞眼

歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」 新芝翫、堂々と立役像

「祝勢揃壽連獅子」に出演する(左から)中村歌之助、中村橋之助、中村芝翫、中村福之助(松竹提供)
「祝勢揃壽連獅子」に出演する(左から)中村歌之助、中村橋之助、中村芝翫、中村福之助(松竹提供)

 10月に続き、中村橋之助改め八代目中村芝翫(しかん)と長男=新橋之助、次男=新福之助、三男=新歌之助の親子4人同時襲名披露。吉例顔見世で、ベテランから若手までにぎやかな顔ぶれだ。

 昼は祝儀舞踊「四季三葉草」から。市川染五郎が豪快さよりソフト感あふれる粂寺弾正を演じた「毛抜」。続く「祝勢揃壽(せいぞろいことぶき)連獅子」は、新芝翫と3兄弟が親獅子、仔獅子ではつらつと踊る。最後に「加賀鳶」。中村梅玉(ばいぎょく)以下、染五郎、尾上(おのえ)松也、襲名の3兄弟、市川左團次ら花道のツラネが見物。鳶頭・梅吉から出て竹垣道玄に変身、小悪党ぶりを発揮する松本幸四郎が抱腹絶倒だ。

 夜に力作2本。「元禄忠臣蔵」から「御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)」。赤穂浪士の討ち入りを願う徳川綱豊卿(片岡仁左衛門)と浪士、富森助右衛門(染五郎)との仇(あだ)討ちをめぐる本心の探り合い。悠然とした仁左衛門の大きさ、発火しそうな染五郎の熱情。弾丸のような台詞(せりふ)劇に新歌舞伎の神髄を見る。

 「口上」の後に「盛綱陣屋」。兄弟が敵味方に分かれて起こる戦争の悲劇。兄の佐々木盛綱(新芝翫)が弟、高綱の贋首を「本物」と言上する心理の綾。味方への忠義、家族たちへの情。潔いとはいえぬ武将の揺れる心を新芝翫が繊細に演じ、女形の先代とは違う立役像を堂々と印象付けた。大坂夏の陣がモチーフの話だ。高綱妻の篝火(かがりび)に中村時蔵、盛綱母の微妙(みみょう)に片岡秀太郎、和田兵衛秀盛に幸四郎。切りに長唄舞踊「芝翫奴」。25日まで、東京・銀座の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)