幻聴や妄想を疑似体験、統合失調症患者の感覚学ぶ バーチャルリアリティー、医療分野にも

幻聴や妄想などが再現された統合失調症のVRのイメージ(ヤンセンファーマ提供)
幻聴や妄想などが再現された統合失調症のVRのイメージ(ヤンセンファーマ提供)

 ゲーム業界で注目されているバーチャルリアリティー(VR、仮想現実)の映像技術の導入が、医療分野にも広がっている。精神疾患の症状を理解するため、患者の感覚をVRで学ぶ装置が開発されたほか、外科手術の訓練にも取り入れられている。未知の治療法への応用や医療技術の向上に役立つとの期待が高まっている。

 米ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門を手掛けるヤンセンファーマ(東京)は今年5月、統合失調症の特徴的な症状である幻聴や妄想を疑似体験できる装置を開発した。医療関係者や患者をサポートする家族らに疾患について、より理解を深めてもらう狙いだ。

 装置は専用アプリをダウンロードしたディスプレー、専用ゴーグル、ヘッドホンで構成。頭部につけて映像を見る。声がした方向に顔を向けると、そこに人はいないといった状況やコンビニの店員や客が自分を嘲笑しているかのような感覚が疑似体験できる。装置は販売せず、患者の家族らの集会などで提供する方針だ。

 100人〜120人に1人の割合でかかるといわれる統合失調症について、装置を監修した精神・神経科学振興財団の高橋清久理事長は「適切な治療によって回復も期待できる疾患。VRによる周知活動がうまく働き、正しい理解が進めば、誤解や偏見が減って当事者が生活がしやすくなるのではないか」と話す。

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