湯浅博の世界読解

ドゥテルテ旋風後の中国は南シナ海で「戦略的小休止」

中国はハーグ裁定後、(1)国連海洋法条約から脱退するか(2)国際法を守ってフィリピンと和解するか-の二者択一を迫られていた。中国にとっては過酷な選択であった。そこに、フィリピンの反米大統領が接近してきたのをテコに、ハーグ裁定の棚上げに成功した。

もっとも、中国は「九段線」の独り占めも、フィリピンから奪ったスカボロー礁も放すつもりはない。単なる「戦略的小休止」だから、同礁周辺に公船を浮かべ、フィリピン漁船の様子を見ている。国際社会がハーグ裁定を忘れ、ドゥテルテ氏のいう「2年以内の米軍撤退」の道筋ができれば、軍事基地化も中国の思いのままだ。

1991年末に米軍がフィリピンのスービック基地から撤退後の「力の空白」で、中国が南シナ海に進出してきたことを想起されたい。フィリピンは2016年3月に米軍がフィリピン空軍基地を利用できるよう合意した。

ドゥテルテ氏が「神」のお告げで、中国の野心と戦略に気づくことを祈る。中国が再び「力の空白」を埋める時間は、彼のいう2年すら待たない。

(東京特派員)

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