現在は自身が会長を務める横浜市内のジムで若手にアドバイスを送りながら汗を流す。「私ができなかった3階級制覇を目指せる世界王者を育てたい」。73歳の今もボクシングへの情熱は衰えを知らない。
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旭日小綬章 作家・宮城谷昌光さん(71)
■「無名時代の苦しみ創作に」
「長い間書いてきたことへの評価だと思っています」。柔和な顔をほころばせながらも、「文学賞をとっても次の日には忘れるべきだと思って生きてきた。そうでないと前には進めない」と気を引き締める。
古代中国の壮大なドラマを格調高い文体で紡ぐ。歴史小説は「美しくないといけない」が持論。忘れられた美しい言葉や風習を一時よみがえらせる。それが「日常で味わえない爽快感を読者に与える」と考えている。
高校時代から作家を志し、早大卒業後、出版社に勤めた。試行錯誤を重ね、郷里で塾を経営する傍ら書いた歴史小説でデビューしたときは既に40代半ば。平成3年には中国・春秋時代の絶世の美女である夏姫の数奇な半生を描く「夏姫春秋」で直木賞。多くのベストセラーを生んできた。「無名時代の苦しみが創作に生きる。評価されない時期が長くて良かった、と今は思える」
大作「三国志」を12年がかりで完結させ、現在も複数の小説を並行して書く。仕事が終わるのは連日深夜だ。「(登場人物が)自由に何でもできる歴史小説は面白くない。不自由さにしばられ、苦しみながらも活路を見いだす人間の姿が共感を得る、と思うのです」