防衛最前線(94)

知られざる英雄、福島第1原発に向かった多用途支援艦「ひうち」

【防衛最前線(94)】知られざる英雄、福島第1原発に向かった多用途支援艦「ひうち」
【防衛最前線(94)】知られざる英雄、福島第1原発に向かった多用途支援艦「ひうち」
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 普段はみんなのサポート役で地味な存在だが、あるとき、誰もできない危険な仕事を引き受けて英雄となる。そんな話が海上自衛隊にもある。平成23年3月、多用途支援艦「ひうち」が洋上から向かった先は、東京電力福島第1原発だった。

 長さ65メートル、幅12メートル。基準排水量は980トンで定員約40人。海自の中でも小型艦に位置づけられる「ひうち」の本来の任務は、発射された魚雷を回収したり、護衛艦などが射撃訓練をする際に水上標的を曳航したりするほか、自衛艦の出入港を支援する役回りだ。

 敵艦艇を攻撃する魚雷は「機密の塊」(海自関係者)で、海上に放置することはできない。すべての魚雷を回収するまで訓練を終了することはできず、水上に浮かんだ魚雷を素早く拾い上げなければならない。「ひうち」にはプロペラで水を噴出させて微妙な位置取りを可能にする「バウスラスター」やクレーンが装備されており、いわば「球拾い」のプロともいえる。

 水上目標の曳航も重要な任務だ。船の形をした小型の標的を引っ張り、これを護衛艦が狙い撃つ。標的の曳航は護衛艦でもできるが、そのためには曳航用装備を取り付けなければならない。「ひうち」の場合は標準装備されているため、迅速に作業をこなすことができる。故障などで航行不可能となった艦船を曳航することも期待されている。

 この海自随一の曳航能力が、「ひうち」に大役が回ってきた理由だ。

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