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ヤクルト、20年ぶり6度目の日本一

山本一力さん、落語小説集「芝浜」刊行 より細やかに江戸の心情

 幼いころから、ラジオで流れる落語に親しみ、江戸っ子の見えとやせ我慢、粋とやぼ、人情や食文化など多くのことを知らず知らずのうちに学んできた。高校入学のため、東京に移り住んでからは、寄席に何度も足を運んだ。

 「落語のすごいところは、大所高所から語らずとも、また、突き当たりまで言わなくても『察する』という感覚を演者も聞く側も共有し、信頼関係が成り立つこと」。一人の噺家が複数の人物を演じ分け、立体的に物語を浮かび上がらせる手法は、小説家の苦労とも共通する。作家になってからは、落語への畏敬の念がより強まったという。

 「映像を見たら答えは一つだが、落語から思い描く像は人それぞれ。江戸時代は、しっかりした法制度もなく衛生面も悪かった。過酷な時代を生き抜くには先を予測し、精神を研ぎ澄ますしかない。だからこそ、先を読む力も想像力も育まれたのだろう」

 スマートフォンなどデジタル機器が普及する一方で、最近は寄席に足を運ぶ若い人が増え、空前の落語ブームともいわれる。

 「落語も小説も読み手の想像力を刺激する。私の小説を読んで落語を聞く人がもっと増えれば、こんなにうれしいことはない。副読本として活用していただければ」と笑顔を見せた。(村島有紀)

【プロフィル】山本一力

 やまもと・いちりき 昭和23年、高知県生まれ。東京都立世田谷工業高卒。平成9年、『蒼龍』でオール読物新人賞。14年に『あかね空』で直木賞を受賞。19年5月から1年間、本紙で『ほうき星』を連載した。