8年ぐらい前のことだろうか。本紙最終版の1つ前の版である14版が降版した後のことである。
部員から「早版(印刷工場から遠いところに配達するため早い時間に降版する紙面)から、ずっとこういう表現でいってるんですけど」と言われた。
そこには、「苦虫をかんだような表情で…」とあった。
「これでもいいですかね?」
「う〜ん。正確に言うと『かみつぶしたような』だよな」
・(慣)苦虫を噛み潰したよう=ひどくにがにがしい顔をするようす。不愉快そうな顔つき(『デジタル大辞泉』、小学館)
そもそも「苦虫」って何なの?と思いました。「苦虫」なんて、あまりうまそうでもないし…。ましてや噛(か)んだ後つぶすなんて、口の中で虫の汁が飛び散って、苦くてまずそうな感じ。
・苦虫=かめば苦かろうと思われる虫(『デジタル大辞泉』)
・苦虫=かんだら苦いだろうと思われる虫(『明鏡国語辞典』、大修館書店)
辞書によると想像上の虫、ということですね。虫を食べる食文化もありますが、都会で生活していると、虫を口にすることはあまりないですね。甘いも苦いも分からない。
子供の頃、イナゴを食べたことがあったけれど、どんな味だったか記憶に残っていません。あえて思い返してみると、甘い苦いよりも、つくだ煮のしょっぱい味のイメージ。それこそ、今思い出して考える後付けのイメージ。辞書の「苦虫」と同じ、想像上の味でしかありません。