からだのレシピ

糖質を緩やかに制限する食事法(6)

 ■発症の10年前から異常値に 食後血糖値で糖尿病を予防

 糖尿病専門医である食・楽・健康協会の理事長、山田悟氏(北里研究所病院糖尿病センター長)がロカボ(緩やかな糖質制限食)を推進する思いの根底には、研修医の頃出会った一人の糖尿病患者がいる。

 外来にかかっていたその男性は将来個人でタクシーを営業したいという夢を持ちながらタクシー会社で乗務していたが糖尿病にかかり、合併症で視力も弱まり免許が更新できず仕事を失っていた。さらにその後入院して透析を受けることになってしまった。仕事も夢も消えてしまった男性を前に山田氏は、「私たち医療従事者は夢を持って一生懸命働いてきた人の健康をどうして守ってあげることができなかったのか」と強く心を痛めた。

 同協会が開催している一般人向けロカボ啓蒙(けいもう)イベントでは、参加者に通常食とロカボの2種類を用意し、食前・食後の血糖値を計測している。ほとんどの参加者の食前血糖値は正常値の110mg/dl以下だが食後血糖値に大きな違いが見られる。通常食を摂取した人たちの食後血糖値は跳ね上がり平均で165となるが、ロカボ食では125だ。普通の食生活で実はかなりの割合の日本人が食後の高血糖値の危険にさらされていることがわかる。山田氏は血糖値と糖尿病の関係について「空腹時血糖値は糖尿病を発症する1〜2年前から上がり始め、食後血糖値は10年も前から異常値になる。食後血糖値で糖尿病の発症を予防する対策が立てられる」と語る。生活習慣病予防になるロカボはおいしく楽しく続けられる食事法だ。

 山田氏の元には多くの医師と管理栄養士が見学に訪れ、9月には神戸市の後援で町ぐるみのロカボに取り組むプロジェクトがスタートした。「日々の暮らしを頑張っている人たちにロカボの考え方が届けば、一生懸命仕事をしても体を壊すことはなく健康な生活を送れるはず」とロカボに託す期待を語った。(宇山公子)=おわり

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