政論

民進党は年金抑制強化策の必要性を理解しているか 不安をあおるのではなく建設的議論を

 民進党は政府が国会提出している年金制度改革関連法案を「年金カット法案」と批判しているが、法案に盛り込まれている年金抑制強化策の必要性を十分理解していないのではないか。

 毎年度の年金額は物価や賃金に連動して改定する。ただ、ここ数年の賃金の伸び悩みで年金の相対的な高止まりが生じている。現役世代の手取り収入に対する支給水準は平成16年度に59・3%だったのが、26年度には62・7%と上昇。その分、将来世代の年金が目減りしているのだ。

 こうした事態に対応するため、新ルールでは33年度以降、賃金が下がった際は必ず年金を減額する仕組みを盛り込んだ。現在の高齢者には厳しいが、子や孫たちの安心のため少し我慢してもらうのが狙いだ。

 一方、旧民主党が抜本改革案として示した新年金制度は「最低保障年金」と「所得比例年金」を組み合わせる。所得比例年金は賃金変動などに合わせて年金額が決まり、物価よりも賃金が下がった場合は年金額も下がるはずだが、民進党はこのようなケースを「検討も議論もしたこともない」(山井和則国対委員長)と説明する。党関係者に聞くと、最低保障年金を加えれば全体の年金は目減りしないとのことのようだが、最低保障年金の規模・財源は不明確なままだ。

 抜本改革の困難さから民進党もまずは現行制度の手直しを実行するという「二段階論」を受け入れているはず。年金を政争の具にして高齢者の不安をあおるのではなく、低年金対策など建設的な議論に真摯(しんし)に取り組むべきだ。(桑原雄尚)

会員限定記事会員サービス詳細