【産経抄】「自分が書かないと、妻は忘れ去られてしまう」…元新聞記者はそう言って原稿を託した 10月27日(1/2ページ) - 産経ニュース

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「自分が書かないと、妻は忘れ去られてしまう」…元新聞記者はそう言って原稿を託した 10月27日

 23歳の無名の指揮者だった小澤征爾さんは、フランスのマルセイユ港から、日の丸を掲げたスクーターにまたがってパリに乗り込んだ。「世界のオザワ」のエピソードは、あまりにも有名である。

 ▼実はスクーターのアイデアは、知り合いの毎日新聞の記者から出たものだ。こんな秘話で始まる『我が家の昭和平成史』(文芸春秋)は、今年5月に刊行された。著者の塚本哲也さんとは面識がない。遠くから仰ぎ見る存在だった同業の大先輩が22日、87歳で亡くなった。

 ▼小澤さんに続いて、塚本さんもウィーン留学を果たす。かたわらには、留学の相談をするうちに恋に落ちた、ピアニストのルリ子さんの姿があった。その後の特派員時代をあわせると、滞欧生活は十数年に及ぶ。

 ▼ウィーン特派員のとき、80歳の老婦人の死亡記事が目に留まった。婦人とは、欧州で最も由緒ある家柄のハプスブルク家最後の皇女であった。その波乱の生涯を追って取材を重ね、新聞社退職後に発表した『エリザベート』は、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞する。