一般市民のAED蘇生処置で、救命者の社会復帰率2倍に 京大&阪大チームが調査

 駅や役所など国内の公共スペースに設置された自動体外式除細動器(AED)を使って市民が心停止状態の人に電気ショックを与える処置を行った場合、未使用時に比べて、約1カ月後に社会復帰できる割合が約2倍多いことが分かったと、京都大や大阪大の共同研究チームが27日付の米医学系学術誌で発表した。

 チームによると、街中に設置されたAEDを市民が使用することの効果を、国レベルで調査した研究成果の公表は世界で初めて。AEDの普及が人命救助に役立つことを実証したとしている。

 チームは平成17〜25年の消防庁の救急搬送患者の統計データを基に、街中で「心室細動」の症状で倒れた心停止の患者に対する、市民のAEDの使用状況などを分析した。

 その結果、市民が街中でAEDで電気ショックを与えた場合、全体の38・5%が1カ月以内に、介助なく社会復帰できる水準まで脳の機能が回復した。一方、処置を行わなかった患者で社会復帰できたのは18・2%だった。

 チームによると、調査対象の9年間の累計で、AEDを使って命が助かった患者数は835人。だが、AEDが公共スペースで約50万台設置されたとみられる半面、使用率は約1割にとどまり、実質的な普及は進んでいない状況だ。

 チームの石見拓・京大教授(蘇生=そせい=科学)は「市民がAEDを使ったことで生存者の増加に貢献したといえる。今後はAEDを使えるようになる教育や啓蒙(けいもう)活動を広げる必要がある」と話している。

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