主張

介護現場に外国人 待遇改善と矛盾しないか

 人手不足が深刻化する介護現場で働く外国人を大幅に増やすための2法案が衆院を通過した。

 途上国の人々に技能や知識を身に付けてもらう外国人技能実習制度を拡大し、介護福祉士の資格を取得した留学生が日本で働き続けられるよう、在留資格に「介護」を追加しようというのだ。

 だが、安易に外国人に頼ろうとする姿勢はおかしい。安倍晋三政権は1億総活躍プランで介護職の待遇改善を掲げており、これと矛盾しないか。

 待遇への不満、不安から、資格を持ちながら他の業種に移らざるを得なかった人は多い。介護を日本人にとって魅力ある職場にする取り組みこそ優先すべきだ。

 技能実習生を「安価な労働力」と捉えているならば誤りだ。同一労働同一賃金の原則にも反する。外国人が増えることで、むしろ全体の賃金が低く抑えられることを懸念する。

 結果として、日本人の介護職離れが加速したのでは、本末転倒も甚だしい。

 団塊世代が75歳以上となる10年後には、253万人が必要な介護職の不足が約38万人に達するとされる。これを手っ取り早く穴埋めしようという思考なのかもしれないが、外国人労働者に依存して解決する問題ではあるまい。

 介護は極めてデリケートな対人サービスである。認知症や会話が不自由な人の、わずかな表情の違いや短い言葉から、伝えようとしていることや体調の変化をつかみ取り、医師などに適切に伝達する能力も問われる。

会員限定記事会員サービス詳細