バチカンと中国が近く和解か 司教任命権で外交断絶 法王が歩み寄り 

 【ベルリン=宮下日出男】キリスト教カトリックの総本山バチカンと中国が対立する司教任命権をめぐる問題で近く合意する可能性があるとの観測が高まっている。ローマ法王フランシスコは長年の懸案を決着させ、中国との関係改善につなげたい考えとみられるが、人権問題などで議論を呼ぶ可能性もある。

 バチカンと中国は1951年に外交関係を断絶。中国が宗教を管理下に置くため、公認のカトリック団体にバチカンの承認なしに聖職者を任命するのに対し、バチカンは任命権を主張。任命権問題は関係改善の大きな課題となっている。

 ロイター通信などによると、双方はこの問題の決着のため、今年4月に作業部会を設けるなどして協議。中国側が司教の候補を提示し、最終的に法王が任命することでまとまりつつあるという。候補に倫理上の問題などがあれば、法王が拒否できるともしている。

 中国側が独自に任命した司教8人中4人もバチカンは容認する方向で、8月には訪中したバチカン代表団と一部司教との面会が実現した。双方は新たに司教2人の任命も検討し、課題は残るが、バチカンは年内に合意したい意向という。

 中国では政府公認のカトリック団体がある一方、非公認の「地下教会」が存在し、多くの信者が法王に忠誠を誓うが、当局に弾圧されている。法王としてはバチカン承認の司教の受け入れで教会の分断を回避し、信者の環境の改善につなげたい考えとされる。

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