書評

櫻井よしこが読む『自衛隊幻想 拉致問題から考える安全保障と憲法改正』 一体この国は誰が守るのか?

『自衛隊幻想 拉致問題から考える安全保障と憲法改正』
『自衛隊幻想 拉致問題から考える安全保障と憲法改正』

日本国の欠陥を直視せよ

 一体この国は誰が守るのか。拉致被害者を救出するのは誰か、尖閣諸島をはじめ、領土、領海を守るのは誰か。

 拉致被害者は何十年も北朝鮮にとらわれたままである。国民が他国にとらわれ、ほぼその一生をとらわれの地に拘束されるのを見逃し続ける国など、本来、国家とは呼べない。

 尖閣諸島に迫る中国は執拗(しつよう)、着実に力を増強して、要求し続ける。政府の強い意思と自衛隊の十分な軍事力なしに、日本人と日本国を守り切れない状況が生まれている。だが、わが国は、少なくとも安倍政権以前、守る意思も力も欠落させてきた。

 この、国とはいえない日本国の欠陥に、日本人は、政治家も国民も、気がついているのかと、本書は鋭く問うている。自衛隊員の立場から3人の当事者たちが生々しい体験に基づいて率直に語り合っている。

 拉致等の事案で外務省は情報収集および分析において、殆(ほと)んどいつも間違ってきた。憲法前文の精神に浸り、外交における軍事力の効用を全面的に排除し、国際社会の善意という幻に縋(すが)り、希望的観測で国際社会を推し量ってきた。国民救出を国家の責務と考えない愛のない外交を展開してきた戦後日本国の異形の姿が浮き彫りにされている。

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