ステージ 芸

元駐日ポーランド大使が脚本 政治犯として死んだポーランドの青年と、福島で息子を失った日本人がアウシュビッツで出会う… 新作能「鎮魂」

 「人災である戦争と自然災害では違いがあるが、愛する人を失った人が埋められない深い悲しみ、癒やし得ない傷を受けることは同じ」と両者を結びつけ、鎮魂の思いを能の形式で作品にした。

 作品で両者を結ぶ要となったのが平成24年、大使として歌会始に招かれた際、両陛下が詠まれた津波被害への鎮魂の和歌だ。「岸」をお題とした「津波来(こ)し時の岸辺は如何(いかが)なりしと見下ろす海は青く静まる」(天皇陛下)と「帰り来るを立ちて待てるに季(とき)のなく岸とふ文字を歳時記に見ず」(皇后さま)に感動。2首を詞章に盛り込み、死者を悼む普遍的な思いを込めた。

 銕之丞と笠井は物語の舞台となるビルケナウ博物館も訪問した。銕之丞は「印象は言語にしがたいが、息することも恐れる一角がいくつもあった。友人や身内を失った喪失感、追悼にはどうしたらいいかを自分のテーマにしたい。能が600年以上、守り続けた普遍的な力を、ごらんいただきたい」と話す。

 笠井は23年にもロドヴィッチ元大使の新作能「調律師-ショパンの能」を日本とポーランドで演出した。「能は死者の魂を呼び出し、鎮魂する芸能。両陛下の和歌も加わり、一体化した能の力を発揮すれば、現代にも海外にも通じる作品になるのではないか」と、追悼の思いを能と和歌という手段で海外発信する。

 ポーランド公演は11月1日、アウシュビッツの聖ヨゼフ平和教会。4、5の両日はブロツワフのシアター・オリンピックに参加する。日本公演は14日午後6時半、国立能楽堂(東京都渋谷区)。同時上演は「清経」。ロドヴィッチ元大使の解説あり。銕仙(てっせん)会(電)03・3401・2285。

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