政府が今国会で成立を目指す年金制度改革関連法案でも、将来の年金水準を確保するため、平成33年度以降、賃金が下がった際は必ず年金を減額する仕組みを盛り込んだ。現行では、高齢者の暮らしへの影響を最小限にとどめるため、物価より賃金が下がった場合は物価に合わせて年金を減額。物価が上昇し賃金が下落した場合には年金額を据え置いている。見直し後は、いずれのケースも賃金下落に合わせて年金額が改定され、減額幅は現行より大きくなる。
政府は、現役世代の手取り収入に対する年金水準を示す「所得代替率」の最終的な目安を50%としているが、26年度の所得代替率は62・7%。デフレ下で年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が実施されなかったため、所得代替率が高止まりしており、将来世代の年金水準低下を招いている。
こうした現状を受け、民主党政権時代の24年5月の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で、岡田克也副総理も「デフレ下でマクロ経済スライド的な考え方が発動できないということではいけないので、それはそれで何らかの改革が必要だ」と述べていた。