野口健の直球&曲球

「退く」は必ずしも「負け」ではない 次につながる「前進」もある

 しかし、帰国後は方々で「失敗した」との言葉が向けられた。何をもって「成功」で何をもって「失敗」なのか。登れば成功で登れなければ全て失敗なのか。そんな薄っぺらなものではないだろう。「撤退」なり「退却」という言葉を嫌うがために「転進」という言葉が便利よく使われた時代もあったが、その結果どうなったか。「退く」は必ずしも「負け」ではない。「退く」ことによって次に「つながる」のであればそれは僕にとって前進なのだ。

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【プロフィル】野口健

 のぐち・けん アルピニスト。1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。25歳で7大陸最高峰最年少登頂の世界記録を達成(当時)。エベレスト・富士山の清掃登山、地球温暖化問題、戦没者遺骨収集など、幅広いジャンルで活躍。新写真集に『ヒマラヤに捧ぐ』(集英社インターナショナル)。

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