各国の先端企業が自動運転車を実現するため技術開発にしのぎを削っている。最前線は米西海岸のシリコンバレーだ。日本企業も相次いで研究拠点などを開設し、世界中から集まった頭脳と切磋琢磨する。ただ、米国では先端技術が抱える問題点もいち早く表面化。関係者は事故やサイバー攻撃をどう防ぐか、といった課題を突き付けられている。事故時の法的責任の所在といった難題も残っている。(板東和正)
最前線の現場で
アップルなどがオフィスを構えるカリフォルニア州クパチーノ。シリコンバレーの「心臓」とも呼ばれるこの都市に、完全自動運転を実現する技術などを開発するパナソニックの研究所がある。
2006年に設立された同研究所は、人工知能(AI)を中心とする自動運転システムを開発中だ。同社は、現地の研究者らから得られる情報にも期待している。シリコンバレーには、組織の垣根を越えて切磋琢磨し、最新のIT技術を進化させてきた歴史があるからだ。
パナソニックの飯田正憲・技術広報課課長は「最前線の人材と交流することで、何をすべきかを初めて発見することが多い。日本に閉じこもっていたら乗り遅れる」と話す。現地では毎日のように、自動運転などの話題をテーマにした異業種勉強会や意見交換の場があるという。
ドライバーが運転していなくても、座席が自動的に揺れて危険を知らせる技術を開発するクラリオンも、欧米に販売拠点を設置。自動運転の関連技術について情報を集めている。
ハッカーの脅威
自動車のワイパーが動き始めた。車内の男性はレバーではなく、ノートパソコンを操っている-。
今年7月、米国から、自動運転技術の開発者にとって衝撃的な映像が発信された。映像にあるのは市販されている米国車で、操作した男性は米国防総省国家安全保障局(NSA)の元職員。ネットに接続したパソコンでワイパーを操作していた。