浪速風

沈黙も伝説になる

「阿Q正伝」などで知られる中国の文学者で思想家の魯迅(ろじん)は1936年の今日、亡くなった。「沈黙しているとき私は充実を覚える。口を開こうとすると、忽(たちま)ち空虚を感じる」と言った。ボブ・ディラン氏は受賞が決まったノーベル文学賞について、いまだ沈黙している。

▶選考したスウェーデン・アカデミーも連絡が取れないというから徹底している。フォークからロックへ、そして一時期はゴスペルを…と音楽のスタイルを変え、ファンを戸惑わせ、批評家を悩ませた。解釈は好きにしろと、わが道を行くのがディラン流。「文学性」や授賞の是非をめぐる論議もよそ事のように聞いているのだろう。

▶12月10日に予定される授賞式を世界が注目する。はたして姿を見せるのか、何を語るのか。「天才なんかあるものか。僕は他人がコーヒーを飲んでいる時間に仕事をしただけだ」。これも魯迅の言葉だが、ディラン氏がさらりと言ってのけたら伝説の新たな一章になるのに。