出前講義@関学

なぜシャープは鴻海に買収されたのか 日の丸家電失敗の本質

 日系電機メーカーは軒並み液晶パネル製造から手を引き、主力のテレビ用を海外調達に切り替え価格競争の影響を抑えにかかったが、「液晶のシャープ」は平成24年3月期に最終損益が3760億円の赤字に転落した。

 その後、一時はスマートフォン用の小型液晶パネル需要で息を吹き返したかに見えたが、27年3月期、28年3月期と2期連続で2千億円超の最終赤字を計上し、資産をすべて売っても借金を返せない債務超過に陥った。

〝日の丸連合〟か外資か

 自力再建が絶望的となったシャープに対し、官民ファンドの産業革新機構と鴻海が、それぞれ出資を伴う支援を提案した。

 産業革新機構の傘下には、ソニー、東芝、日立製作所の液晶事業を統合し24年に設立したジャパンディスプレイ(JDI)がある。同社設立の際、シャープも合流を打診されたが断っていた。経営危機で日の丸液晶に加わる構想が再び浮上した。

 鴻海は、米アップルのスマホ筐体製造と組み立てを受注し、郭台銘会長が一代で売上高15兆円規模に成長させた受託製造企業。郭会長は「液晶を手に入れればビジネスが拡大する」と考え、日立の液晶事業買収を試みたことがあるがJDI設立で頓挫。その後、低稼働率にあえいでいたシャープの堺工場への出資、共同運営へと関与を強めていた。

 機構と鴻海のシャープ争奪戦は、主力取引銀行2行の思惑も交錯し、情報戦に。機構より不利とみた鴻海の郭会長は、銀行幹部や有力財界人を相次いで訪問、シャープ本社にも足を運び、集まった報道陣の前で多額の出資をアピールし一気に形勢逆転した。

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