主張

タイ国王死去 揺るがぬ民主主義を保て

 世界最長、70年の在位を誇り、タイの「安定の要」だったプミポン国王が88歳で死去した。

 自ら国家の難局を乗り切り、国民から深く敬愛された国王だった。日本の皇室との深い交流もある。改めて哀悼の意を表したい。

 タイ国民の悲しみと動揺は大きいだろうが、政治的な不安定化が繰り返されぬよう結束を固めてほしい。

 タイの民主主義は、国王を元首に置き、その徳と権威に議会制民主主義を併存させる「タイ式民主主義」と呼ばれる。

 国内が大きく混乱した際には、国王が乗り出して収束を図った。軍事政権と民主化を求める市民が衝突した1973年の「10月14日事件」などが有名だ。

 特に、軍出身の首相の辞任を求めるデモ隊と軍・警察が衝突した92年の「5月流血事件」では、首相と野党指導者を呼んでひざまずかせる場面が世界に報道され、存在感を印象づけた。

 積極的に地方視察も行い、「王室プロジェクト」と呼ばれる開発事業を実施して農民を支援した。こうした功績も、国民の信頼を揺るぎないものにした。

 しかし2001年に政権を握ったタクシン氏の登場で新たな対立の時代へ入った。同政権は農村へのバラマキ政策で支持を拡大したが、農村と都市との格差問題も絡み、「タクシン派」と「反タクシン派」との衝突が繰り返されている。軍がクーデターでタクシン派を追放する事態にも発展した。

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