広告大手の電通で昨年12月、新入社員の24歳の女性が自殺したのは、長時間の過重労働が原因だとして、労災が認定された。東京労働局の過重労働撲滅特別対策班などは同社本社や支社の労働実態を調べるため、立ち入り調査に入った。
立ち入り調査は労働基準法に基づくもので、抜き打ちで行われた。違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いもあるという。悪質な法令違反がみつかれば、会社側の管理責任が問われ、刑事事件に発展する可能性もある。
同社では平成3年にも入社2年目の男性社員が過労で自殺し、最高裁は12年に会社側の責任を認める判決を出した。これが契機となり、過労自殺など国の判断基準が見直された。
だが、悲劇は繰り返された。若い社員が再び自ら命を絶つ事態を招いた反省に立ち、電通は労務管理体制を精査し、再発防止を徹底しなければならない。
政府は、長時間労働の是正を「働き方改革」の柱として位置づけている。過労を強いるような職場では生産性など上がるはずがない。実効性ある規制を打ち出す必要があろう。
昨春に電通に入社した女性社員は、試用期間が終わった昨年10月から残業時間が急増し、月100時間を超えて「過労死ライン」とされる80時間を上回っていた。激務が続き、「眠りたい以外の感情を失った」といった悲痛な叫びがツイッターに投稿されていた。